寝台列車が消える日

先日「2015年度末を以ってブルートレイン(寝台列車)が全廃」という報道が流れた。いずれはそういう日が来るだろうと覚悟はしていたが、あまりに近い将来の出来事に開いた口が塞がらなかった。一世を風靡した「北斗星」だけでなく、現在でもなかなかチケットが入手出来ない「カシオペア」や「トワイライトエクスプレス」もその対象になっているのだからJRも本気なのだ。鉄道に興味を持ち始め、寝台列車や夜行列車の日常から逸脱した叙情的な時間に憧れ、そしてあらゆる列車に乗り込んで旅をした。ターミナル駅では満員の通勤列車から多くの視線を浴びせられ、車内では見知らぬ同士が一夜限りの情けに酒を酌み交わす。規則正しいレールの繋ぎ目の音とあっという間に飛び去る踏切の警報機の音が旅情を掻き立て、朝方目を覚ますと常夜灯の下で黙々と新聞を降ろす駅員の姿・・・。そんな懐かしさに久々に浸りたいと思っても、寝台列車に乗れるのはあとわずかだ。

寝台列車は寝るものではないというより、正直寝られるシロモノではない。特に初心者は、想像以上に大きい揺れと音に驚いて、なかなか寝付くのは難しいという。しかしながら、朝一番から目的地で用が足せるという利便性がウケて、最盛期には実に41本の寝台列車が設定された。特に夕暮れを迎える時間帯の東京駅や上野駅は、1時間に1~2本の寝台列車が出発していたので、ホームは乗客や鉄道ファンで華やいだ雰囲気だった。列車番号も1~2ケタ台があてがわれ、ヘッドマークを付けた機関車と相まって他の列車を寄せ付けないないほど威風堂々とした姿でファンを魅了していた。東京駅からは西へ、そして上野からは北や北陸方面へ、多くの乗客を乗せて毎夜旅立っていったのである。

やがて新幹線の開業で日帰りが可能になり、車両の老朽化から長距離夜行列車が消え、経費の掛かる寝台列車も次第に減らされていった。個室を増設してプライベート感と豪華さをウリに登場した「北斗星」も、東北新幹線の延長と「カシオペア」の登場で今や見る影もないほどその存在感は薄い。

無くなると分かると乗りたくなるのが人情。個人やツアーで再び賑わいを取り戻すだろうが、終焉の日は決まっている。これまで鉄道の屋台骨を支えてきた寝台列車の最後のはなむけに大勢の乗客に寝台を埋めてもらい、その乗客にはかつての旅の醍醐味を再び味あわせてほしいと切に願う。


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