やはり奥深いF-1の世界を見た

快晴の鈴鹿サーキットで開催された「F-1日本グランプリ」は今年で25周年。その記念大会に相応しいバトルは今年もファンを魅了した。結果から言えば、4連勝中のベッテル(レッドブル)が優勝し、2位には韓国グランプリでマシンが散々な目に遭ったウェバー(レッドブル)、そして3位には目下売出し中のグロージャン(ロータス)が入った。結果だけ見ると何の変哲もないレースのようだが、実はチーム事情が絡んだ非常にシビアなドラマが展開していた。

それは、金曜日のフリー走行から始まっていた。とにかくベッテルが速い。もう手の付けようがないほどで、1回目2回目とそれぞれ30周を走っても常に安定したラップタイムを刻んでいた。以下は、ウェバー、ハミルトン(メルセデス)、ライコネン(ロータス)が入れ替わる展開。アロンソやマッサ(どちらもフェラーリ)はなかなかタイムが上がらず、バトン(マクラーレン)もセッティングが決まっていないのか、それ以下のタイムで推移していた。ただ、ウェバーは今年限りでF-1を去り、来季からはWECへの参戦が決まっていることと、この鈴鹿が大のお気に入りであると公言していることから、このままでは終わらないだろうと少なからず期待はしていた。

ハプニングは土曜日に起きた。フリー走行3回目で快走していたベッテルのマシンに不具合が発生。何とKERS(ブレーキのエネルギーでモーターを回す補助動力装置)が故障し、前日のタイムに届かないまま早々のピットインとなった。結局応急修理をして午後の予選に臨んだが、1~10位までのグリッドを決定するQ3で再び不具合が発生。いつもはぶっちぎりのタイムでポールを勝ち取るベッテルだが、今回はウェバーにその場を奪われ2位に甘んじた(それでもこの結果は凄いが)。これでウェバーが大好きな鈴鹿で優勝を飾る・・・と誰もが確信したに違いない。3位にはグロージャンが入った。

決勝レーススタート。何とグロージャンがロケットスタートを決め、不利なイン側(レコードラインではないので埃が多くグリップしない)から2台のレッドブルをパス、1位へ躍り出た。毎回スタートに課題を残すウェバーだが、今回はグロージャンが良かった。今回のレッドブルのタイヤ交換は2回を予定していた。ピットレーンは80キロ規制があり、これにピットストップの時間をプラスすると25秒が必要となる。必ず2種類のタイヤを使用しなくてはならないルールと、タイヤの寿命に応じて2ストップ或いは3ストップの作戦を選択する。タイム的には2ストップが有利なのは誰にでもわかるが、美味しい部分が無くなったタイヤはタイムが落ち、わずかなミスでスピンやコースオフするリスクが増える。タイヤにやさしいマシンとマネージメントがしっかりと出来るドライバーでない限り、3ストップを選ぶ方が賢明なのだ。

レースは53周。自分的には15周目で1回目のピットイン、残り38周を19周ずつで行くのかなと予想していたので、必死のウェバーとこのままでは終わらないベッテルがどこでグロージャンを捉えるのか、固唾を呑んで画面を見詰めた。
ところがである。早くもウェバーが11周目にピットイン。「何で?」彼のチームラジオでのひとことが印象的だった。これは本人のリクエストではなく、チームからの指示ということになるからだ。確かにグロージャンを1秒以内に追い詰めてはいるが抜くことは出来ない。後方からは毎周0.3秒ずつベッテルが詰めてくる。アンダーカット(オーバーテイクするために前車よりも先にピットインし、ニュータイヤで間隔を詰め、前車がピットインした時に前に出る作戦)狙いなのか? 残り周回数は42、これをハードタイヤで21周ずつ走りきるのは不可能ではないが、終盤相当辛くなることは目に見えている。かと言って3ストップにすれば当然ベッテルが勝つことになる。ま、それはないだろうと思っていたがそれが実際に起こってしまった。ウェバーに対し、25周目にピットインするように指示が出たのだ。これで彼の優勝は消えた。グロージャンを追い掛け回した代償でタイヤライフが短くなったからというのが理由らしいが、途中で作戦が変更された意図がわからない。確かにKERSが復活したベッテルは最速だったし、ずっとグロージャンを抜けなかったウェバーにも原因の一端はあるかもしれない。鈴鹿は抜き所が大変に難しいコースだということを誰もが知っているからだ。ただ、2ストップで行くと決めて臨んでいる以上、ポールを取った彼をバックアップするのがチームではないのか。またしても「セカンドドライバー」という憂き目に遭い、暗黙の「チームオーダー」によりベッテルの優勝を優先したのかもしれない。

結局グロージャンも3ストップで30周目にピットイン、ウェバーが2位に上がったが、2ストップのベッテルが7.1秒の差をつけてチェッカーを受けた。もちろんベッテルが素晴らしい仕事をしたことに変わりはないが、予選後の会見で本当にうれしそうに話をするウェバーを思い返すと、この鈴鹿で優勝していれば・・・とつくづく思う。

ウラを見ればいろいろとあったグランプリだったが、見応えのある素晴らしいレースだった。しかも、日本人ドライバーが不在にも関わらず8万6千人の観客がスタンドを埋め、どの選手にも温かい声援を送っていたし、マーシャルも実に手際の良い仕事ぶりで本場ヨーロッパに引けを取らないレベルをアピールした。まさにどのドライバーからも愛されていることを今年も証明した日本グランプリだった。

24日から開催されるインドグランプリでベッテルが5位以内に入賞すれば、4年連続のワールドチャンピオンが決定する。


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