中国の鉄道事故に思う

中国の高速鉄道路線で大事故が発生した。停電が原因で停車していた列車に後続の列車が追突して、4両が高さ20メートルの高架橋から転落したというもの。今日現在では200名以上の死傷者が出ている。6月に開業した新幹線ではなかったものの、200km/hで運用されている路線と車両に変わりは無い。「手抜き工事」「汚職」「運転教育の短期詰め込み」と、中国の鉄道は昔から良い評判を聞かない。事実、個人が受注操作で簡単に2千億円を懐に入れ、不足した予算の穴埋めに手抜き工事を行う。結果鉄道のみならず建物の床が抜け落ちたり、橋が崩落する大事故に繋がる。その繰り返しだ。

今回の事故は車両そのものの不具合ではなく、安全管理のお粗末さにあるように思う。まず、停電の対応。電車ならば日本でも列車は止まる。しかもディーゼルを含めた全列車が即座に停止する。信号機と信号機の間を「閉塞区間」と呼び、そこには1編成の列車しか進入出来ない仕組みになっているために、今回の中国のような事故はまず起こらない。JR東日本は独自に変電所を所有しているので、停電したとしても復旧は早い(信号プログラムの入力ミスで、過去に長時間列車が止まったことはあるが)。日常も「ATC」「ATS」「CTC」といったシステムで、安全な運行管理が構築されている。その陰には、昭和30年代に発生した「三河島事故」「鶴見事故」といった大きな犠牲が教訓となっているのだ。

記事を読むと、緊急時に作動するはずの停止装置が稼動しなかったこと、本来は追突された列車が追突した列車の後方を走行するダイヤになっていたそうで、何らかの原因で入れ替わった情報が他の列車に伝わっていなかったミスが加わった可能性が強いという。何事もなければダイヤどおりに運行が可能だとしても、今回のようなイレギュラーにはまったくお手上げの状態なのだ。いや、それ以前にこれほどまでに不具合だらけの鉄道が、200km/hで営業運転していること自体が信じられない。
中国鉄道の軌間(レールの幅)は国際規格の1,435mm。在来線も新幹線も同じ規格だ。新幹線は手抜きがあったとしてもそれなりの規格で建設され高性能車両が用いられるが、事故のあった路線は在来線を補強した上に高性能車両を走らせている。だが、その補強もどの程度のものなのか、まったく公表されていない。

中国にも素晴らしい技術を駆使した鉄道がある。「青海チベット鉄道」だ。標高5千メートルを超える過酷な土地にレールを敷設し、自然保護区の動物の往来を分断しないように築堤ではなく橋脚を採用。その橋脚の土台は凍土であるために、季節によって凍結と融解を繰り返す場所では、杭の中にアンモニアを冷媒として封印して融解を防ぐという技術を用いた。ロシアやカナダの工法を参考にし、独自に開発されたとされている(これは確からしい)。アメリカ製のディーゼル機関車3両が牽引し、24時間にわたる長旅を快適な移動空間として提供しているという実績もあるのだ。それなのに・・・。
先日日本やドイツの技術協力を得て開通した新幹線も、「中国独自の技術」として諸外国に特許申請するというニュースを聞いて腰を抜かした。しかしながらフタを開けてみれば、不慣れな職員による運行プログラムの入力ミスや乗務員のミスで、故障や運休が相次いでいる。日本の新幹線が開業して47年、車両やシステムトラブルよる死亡事故はこれまで発生していない。やはり「安全は1日にしてならず」。300km/hを超える車両に安心して身を任せ、流れ去る車窓の風景に恐怖を感じることも無い。これが真の「安全」であり、多くの関係者が身を粉にしてそれを支えている故の結果なのだ。

普通列車の何倍もの料金を払い、わざわざわが身を危険に晒してまで俄か新幹線に乗ろうとする人たちは、これから激減するのではないだろうか。開発を急ぎ、権力を誇示したいがための弊害としては、あまりにその代償が大き過ぎた。「事故は天候による停電が原因で、鉄道側には何ら責任は無い・・・」、こんな記事が出ないことを祈るばかりだ。

このたびの事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。

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