机上旅行 2

目が覚めると、外はすっかり明るくなっていました。時計を見ると午前5時を少し回ったところ。予定通りなら、ほんの数分前に盛岡を出発したはず。東北新幹線なら2時間45分で到着しますが、「はくつる1号」は、5時間をかけてやって来ました。寝台列車は、ある意味時間を贅沢に使う乗り物なのかもしれません。

八戸、野辺地と定刻通りに出発。あたりは身支度を整える客たちで、ざわついていました。1車両に2つしかない洗面台には列が出来ています。この時代は、寝台を含む夜行列車は人気がありました。自由席に乗り込む客は、何時間も前にホームに並ばなければならず、席が埋まってしまうと通路に新聞紙を敷いて、人目も憚らず眠ってしまうのが普通でした。
終着・青森が近くなると、車掌が青函連絡船に乗船する客に、乗船名簿を配り始めました。名簿の上部には赤い線が記されていて、特急列車からの乗り継ぎを意味し、優先的に乗船することが出来ます。

7:15 「はくつる1号」は、定刻に青森駅に到着しました。相変わらず国鉄、いやJRのダイヤは世界一の正確さを誇っています。
ドアが開くと、客たちは一斉に桟橋に向かって猛ダッシュを開始しました。青函連絡船の自由席を確保するためです。青森に辿り着いた郷愁に浸るのは、乗船してからということになります。
潮風に濡れた桟橋は滑ります。大きな荷物を持ったまま、転倒する人を何人も見かけました。

乗り換え時間は、わずか15分。今日の連絡船23便は「摩周丸」。この船は退役後函館桟橋に係留されて、連絡船記念館として余生を送る運命にあります。
7:30 「ほたるの光」に送られて定刻に出航。船室で早居眠りを始める人、デッキに出て先ほど味わえなかった郷愁に浸る人、見送りのいる人、いない人と様々ですが、本州を離れ北の大地へ向かう人というのは、どこか物静かな印象があります。翌年(1988年)の4月に青函トンネルを含む海峡線が開業すれば、この情景も一変するはず。そしてこの青函航路も、80年の歴史に幕を引くことになるわけです。

この日の津軽海峡はうねりもなく、快適な航行が続いています。しばらくは左側に津軽半島、右側には下北半島を望むことが出来ます。船室に戻り、あんパンと牛乳の朝食を摂った後、少し眠ってしまいました。旅の疲れと、耳にやさしく響く北海道弁が、いい子守唄になったようです。

案内放送で目を覚ますと、すでに目の前には函館山がありました。わずか標高300mのさもない山が、毎年とてつもない数の観光客を魅了しています。自分も何度か登りましたが、確かに夜景の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいほど。海峡線の開業で、来年はもっと賑やかになるはずです。

3時間50分の船旅を終え、連絡船は函館桟橋に接岸しました。ここからさらに北へ向かう人たちは、乗り継ぎ列車の自由席を目指して、再び猛ダッシュを開始しました。ここでの乗り換え時間も僅か15分。特急列車の本数が少なく、乗車時間の長い北海道で席を確保することは、旅の疲れの度合いを左右する重要な要素なんです。
自分は予め指定席を用意してあったので、余裕を持って函館駅のホームに到着しました。ここから札幌までは、「おおとり」という特急列車に乗車します。この列車の最終目的地は網走で、実に660Kmを9時間20分かけて走破します。この時代、北海道ではこのような長距離を走る列車が多く運行されていました。

11:35、ディーゼルエンジンを響かせ、「おおとり」は逆「く」の字になった函館駅のホームを滑り出しました。いくつものポイントを渡り終えると、徐々に速度を上げていきます。指定席はほぼ満席。両側の窓の外には雄大な景色が広がっていますが、それを楽しんでいる人は僅かしかいません。

検札の後、車内販売のワゴンが回ってきました。15分の乗り換え時間では弁当を買うことは難しいためか、駅弁が飛ぶように売れていました。売れ筋は、この後停車する長万部駅の名物駅弁「かにめし」。寿司飯の上に、カニをほぐした身がびっしりとのっています。森駅の「いかめし」と人気を二分していて、自分もこの路線ではどちらを買おうかと、いつも思案に暮れるところです。今回は「かにめし」を選択。右側に広がる内浦湾を眺めながら、久しぶりのごはんの感触を楽しみました。

続きます・・・。

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下北半島について-日本の自然を見つめる瞳

下北半島下北半島(しもきたはんとう)は、青森県の北東部にある半島。鉞(まさかり)の形をしているので別名「まさかり半島」。半島全体が下北半島国定公園となっており、本州最北端の地である大間崎や、日本三大霊場の恐山などがある。.wikilis{font-size:10px;color:#666

2007年03月03日(土) 22時23分 | 日本の自然を見つめる瞳

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